相談員

特別養護老人ホームと介護老人保健施設

介護保険施設

 高齢者の入居できる施設は、特別養護老人ホーム(介護福祉施設)、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型施設、グループホーム(認知症対応共同生活介護施設)、介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)、有料老人ホーム、養護老人ホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅、・・・ETC等、様々な施設が存在します。

 その中で、介護保険施設という種類の施設は、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院、介護療養型施設(2024年3月末まで)の4つのことを言います。ただ、介護療養型施設は2024年3月末で廃止になりますので、3つと思っていただければ大丈夫です。グループホームや介護付き有料老人ホーム等は介護保険を使わないのか?と言われればそうではありません。

 何が違うのか?という事ですが、介護保険施設は基本的に国や公共団体、社会福祉法人が経営する公的施設に当てはまります。ただ、他の施設も社会福祉法人や公共団体が経営している事も多いです。元々は措置制度からきている施設で、介護保険施設はご本人が「課税世帯か非課税世帯か?」、「預貯金等がいくらあるか?」で、食費やお部屋代が変わってきます。

 以前も記載しましたが、これを「介護保険負担限度額」と言う制度です。ざっくり言うと、食費や部屋代が安くなる制度で、月に3万千円ほど安くなったり、部屋代も月に3万円くらい安くなったりします。食費を例に挙げると、1日1445円(3食)かかるところが、1360円、650円、390円等と安くなります。そしてその差額分を、保険者である市が負担します。

 これは、介護保険施設の入居とショートステイ利用だけに適応される制度ですので、他のグループホーム等には適応されません。介護保険施設の特徴の1つは、他の施設よりも、安価で利用できるところです。ただ、介護保険外で料金が上乗せされ、その金額によっては高額になりますので、その各施設施設の説明を聞くことをお勧めします。

 また、介護保険施設は従来型(4人部屋が多い)とユニット型(全個室)の施設に分かれます。介護保険負担限度額によって値段は変わるので、1概には言えませんが、大体値段が月に4~5万円くらいユニット型が高くなります。課税世帯の方は従来型なら月に9万くらいですが、ユニット型は13万くらいはかかります。

 介護医療院に関しては私はあまり詳しくないので、ここでは特別養護老人ホームと介護老人保健施設をざっくり説明します。

特別養護老人ホーム(老人介護福祉施設)

特別養護老人ホームイメージ

 

 特別養護老人ホームは、介護福祉施設とも呼ばれ、通称「特養」といわれます。中には「特老」という人もいます。

 基本的には「終の住処」と言われています。入居条件は要介護3以上です。それぞれの地域の特性によって一概には言えませんが、平均介護度は大体4以上はあると思います。要介護4は、生活全般のほとんどのことに介助(お手伝い)が必要な方々です。1概には言えませんが、コミュニケーションをとるのが難しい人が多いです。

 値段的には他の介護保険施設より安く入居ができます。施設ごとで若干変わりますが、従来型の4人部屋で年金の低い方は5万~6万/月で入居が出来ます。おむつ代、洗濯代は基本料金に含まれる形になりますので、特にお金はかからないです。

 特別養護老人ホームは看護師は配置基準でいますが、医師は嘱託医という形ですので随時医師がいるわけではありません。もちろん医療がないというわけではなく、頻度は施設にもよりますが医師はちょくちょく診察には着ます。必要時は電話連絡などでも医師の指示のもと点滴等はできます。

 ただ、医学的管理という面では、少し弱いです。しかし、要介護4、5で90歳以上の高齢者にどこまで治療が必要かは些か疑問に思います。CTやMRI等の検査を受けても、高齢なため治療はしない方や治療ができない方も多いです。「検査をするだけご本人が苦しむだけかも?」と思うことは多々あります。

 ですので、高齢で介護度が重く、生活を重視して最後までの施設として選択するには、おすすめの施設です。

 ただ、3ヵ月以上の入院又はその見込みがある方については退居が求められます。中には1ヵ月以内の入院でも退居を求める施設があります。なので、もし退居になった後にどうするか?をきちんとフォローできるのか、できないのかは、きちんと入居前に聞いていた方がいいです。

 ちなみに、介護保険法上は3ヵ月の入院と決まっていますので、1ヶ月くらいで退居を求めるのは基本的に介護保険法違反です。

 介護老人保健施設

老人保健施設イメージ

 老人保健施設は、「老健」といわれています。

 基本的にはリハビリをしてご自宅に帰る支援を目的としている施設です。理学療法士、作業療法士、等が配置されており、施設によっては言語聴覚士も配置されています。入居その日を起算して3ヶ月間は集中的にリハビリします。3か月後は週に2~3回のリハビリになります。

 1日1回のリハビリが20分と決まっているので、どれだけ介護職員が歩行に付き添えるか、排泄はおむつ交換よりもトイレにお連れするか、食事もその人に会った食事を提供しているか等、生活の場の中でどれだけその高齢者の生活リハビリが行えているかが重要です。

 値段も特養よりは少し高くなりますが、基本料金はそこまで大差はありません。特養と違うところは洗濯代がかかります。その施設で洗濯するのか、業者に頼むのかはその施設次第ですが、そこで料金が変わります。ただ、おむつ代と薬代など基本料金に含まれる形となっており、代金はかかりません。点滴などの治療は疾患によって基本料金に含まれるものと費用が掛かるものとわかれます。ただ、費用が掛かっても1日480円です。

 常勤で医師がいるので、特養よりは医療面が強いです。ただし、医師は夜間は基本いません。また、土日祝も医師がいない施設の方が多いです。入居するとその施設の医師が主治医になります。そして医療面が強くなる半面、医療保険に制限がかかります。

 ざっくり簡単に説明すると、老人保健施設に入居しながら、他の病院を受診し薬を処方してもらうことが原則できなくなります。基本的には入居している老人保健施設から薬を出さないといけません。例外としては癌に対しての薬などは大丈夫です。また、検査項目も心電図や採血検査は入居している老人保健施設でしないといけません。レントゲンやMRIなどの画像診断は他の病院でしても大丈夫です。

 その他にも医療保険に対して細かい縛りがあります。なので「専門的な治療」が必要な随時必要な方は、入居が難しい場合があります。ただ、老健に入居すると病院は受診できないと思われがちですが、できないわけではないです。ただ医療保険に制限がかかるため、受診する病院に老人保健施設に入居していることを伝え、必要な薬等はその病院より支持をもらい、入居している老人保健施設で処方する形になります。

 病院を退院して直接自宅に帰るのが不安な方や、寒い時期や暑い時期だけ入居したい方、自宅での生活が難しいが今後どういう施設がいいか分からない方等に対してお勧めの施設です。

 ただ、施設によって「3ヵ月で退居してもらいます!」というところや「長く入居してもいいです!」というところ等、施設施設で違う場合がありますので、入居前に細かいことは聞いていた方が無難です。

最後に

老人イメージ

 以前は高齢者施設と言えば特別養護老人ホームが主で、また介護保険ができるまでは措置制度と言い、基本的には施設側が「お世話をしてあげている」というスタンスが強かったです。1972年に出版された「恍惚(こうこつ)の人」という認知症高齢者の介護のしょうせつがあります。ちなみに恍惚とは「ボーっとしている」というような意味です。

 主人公が役所の職員に「特別養護老人ホームとはどういうところですか?」と尋ねた時に役所の人は「寝たきり老人やボケ老人を収容する施設です」と答える場面があります。約50年前の特養はの一般的イメージはその様な物でした。しかし、2000年から介護保険法が施行されて、介護保険は基本的に「契約」になります。

 その中で、個人個人の生活動作レベル、認知レベル、環境面、金銭面などを踏まえて、その方に会った施設を検討していくことが必要になります。今回は特別養護老人ホームと老人保健施設をざっくり説明しましたが、今後はグループホームや有料老人ホーム等も紹介していきます。

 言い換えれば、入居される高齢者は所謂「お客様」であり、施設も選ぶことが制度上可能という事です。医療福祉の世界は、入居者や患者に対して、まだまだ「お世話をしてあげている」という雰囲気があり、サービス業などと比べると言葉遣いもレベルが低いのは事実です。しかし、課題点は多いですが以前に比べてはるかに良くなってきています。

誰かの参考になれば幸いです。

-相談員